イラク避難民人道支援(ヨルダン)
本支援活動は終了しました。
イラク避難民※1人道支援(ヨルダン)について
※1 ヨルダンでのプログラムは、ヨルダン政府がイラク難民を「難民」とは認定せずに、「一時的なゲスト」として認識していることを受けて、「避難民」支援という名称を使用しています。
2008年7月11日
状況報告
心理社会的ケア活動 |
イラク難民が活動中に書いた絵 |
バウムテストで描かれた絵 |
心理テストの分析結果 |
修復後の遊び場 |
修復後の遊び場 |
改築後教室になった部屋 |
セレモニーでの伝統ダンス発表 |
ダンスの発表会に参加した子どもたち |
フヘイスのユースセンター |
英語教室の様子 |
改築前の部屋 |
1.背景
ヨルダンは中東和平プロセスの主要な役割を果たしており、1994年にイスラエルとの和平条約を締結し、中東和平達成に向けて一貫して積極的かつ建設的な外交努力を展開しています。2003年の対イラク戦争に関して、戦後はイラク復興支援に独自の貢献を行う一方、イラク国内での活動に制限があるため、首都アンマンはイラク支援を行う国際機関やドナー諸国の拠点と位置づけられています。
ヨルダンは、現在人口の約10%にあたる45~75万人のイラク人が居住しているといわれています。現在、同国は新たなイラク人を受け入れていないため数は増加傾向にないものの、多くのイラク人が不法滞在の発覚を恐れ密かに生活している状況であり、滞在許可がない人々は正式な社会サービスを享受することが出来ないため、深刻な問題となっています。
2.JPFの対応状況
ヨルダンを含む周辺国の情勢悪化はイラク国内問題を悪化させるだけではなく、中東全域の治安に深刻な影響を及ぼす懸念があります。こうした状況を受け、2007年6月にケア・インターナショナル・ジャパン(CARE)、ジェン(JEN)、国境なき子供たち(KnK)、日本国際民間協力会(NICCO)、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)から出動趣意書が提出されました。これを受け、イラク避難民の人道支援ニーズの調査を行うと共に実際の支援事業の立ち上げの準備を行うため、KnK、NICCO、SCJ、CAREの4団体が初動調査を行いました。ジャパン・プラットフォーム(JPF)事務局もJPF参加団体の出動に伴いヨルダンにおけるJPF参加NGOの活動の調整をすることに加え、JPF支援戦略ならびに全体計画策定に向けての情報収集を行うべく初動調査を行いました。
初動調査の結果、ヨルダンではイラク避難民の75%が不法滞在者であるとされており、十分な教育や医療といった社会サービスを享受できないことが確認されました。この調査の結果を受け、
KnK、NICCO、SCJから青少年保護、心理社会的ケア、早期幼児教育などの内容で事業申請書(第1期)が提出され、2007年10月からこの3団体による事業が実施されました。また、現地ニーズの的確な把握、ヨルダン政府や日本大使館との情報共有ならびに連絡調整などを目的としてJPF事務局も事業調整・連携推進事業を同年11月から2008年4月まで実施しました。
2008年4月からは、KnK、NICCO、SCJの第2期の事業が実施されています。第1期の事業の成果と教訓をふまえ、活動地域を広げ、コミュニティーの活動を強化する(SCJ)、カウンセリング活動を追加(NICCO)、コンピュータ教室を追加(KnK)するなど事業内容の充実とイラク問題の長期化に合わせた活動を行っています。JPFではこれまで、初動調査を含め245,664,360円を拠出しました。
3.支援における特徴
問題の長期化とその対応:子どもたちへの支援
イラク問題の長期化で、合法的に仕事をすることが限られているイラク避難民の生活は物質的にも精神的にも厳しさを増しています。その中でもイラク復興の担い手となる子どもたちに対して、心のケアや教育支援などの分野においてJPFに参加する3団体はお互いの活動の情報・経験を共有しつつ活動しています。自信を取り戻していく子どもたちを見て、両親が勇気付けられていくといった例も報告されています。「子どもは家族の窓」であり、これからも活動の中心になると考えられます。
国際援助機関や現地政府からの高い評価
SCJは教育セクターの調整会議の中心的メンバーであり、国連児童基金(UNICEF)や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から高く評価されているセーブ・ザ・チルドレンの一員であり、また早期幼児教育を推進しヨルダン教育省からの信頼もあります。NICCOは日本人専門家の指導の下に活動の事前と事後に心理テストを行って成果をしっかり測定する心理社会的ケアを実施し、UNHCRと事業請負契約を結ぶなどその活動で高い評価を得ています。そしてKnKはイラク避難民とヨルダン人の青少年たちが共同でイラク避難民の経験してきたことをドラマ化したり、そのビデオ撮影を通じて撮影過程でぶつかった様々な問題を考えイラク避難民の生活に対する理解を深めるという活動が評価され、国際移住機関(IOM)との連携活動を実現しました。いずれも国際援助機関によってその活動を高く評価されています。活動分野の調整会議にも積極的に参加し、援助の全体戦略を考えながら活動しています。
またヨルダン政府、関係省庁とのつながりを重視し、事業の報告・会議を重ね、セレモニーに政府や王室を招待するなどの対応を行うことで円滑な活動に至っています。
地域的なアプローチ
イラク問題をたとえるなら、イラク国内の紛争は病気でいう「原因」であり、周辺国での難民問題は「症状」であると考えることも出来ます。つまり原因の治癒なくして症状の改善は困難です。JPFではJPF参加NGOとともにイラク国内での活動との連携や地域的な戦略を考慮しながら原因と症状に同時に対処し、活動をしていきます。