設立の背景
単独のNGOでは効果的な支援活動ができないという課題に直面した、
1999年のアルバニアでの「キャンプ・ジャパン」計画
コソボでは1999年4月に始まったNATOの空爆をきっかけに、アルバニア系住民の虐殺が激化し、約50万人の難民が周辺諸国へ流出しました。その直後、日本のNGO数団体がコソボ難民支援の検討を開始。一般的に、難民キャンプ運営のためには、避難所の建設から食料の配布、医療、ごみ処理、衛生管理、社会サービスの提供といった多種多様なセクターにわたる支援活動を包括的にかつ緊急におこなう必要がありますが、日本のNGOには、それだけの十分な支援を単独でおこなうだけの財政的基盤が十分ではなく、現場での経験を積んだ人材が不足しているのが現状でした。
そのため、単独のNGOでは効果的な支援活動が実施できないという課題が明らかであり、日本のNGO4団体は合同でアルバニアに「キャンプ・ジャパン」と呼ばれるコソボ難民のためのキャンプを建設し、緊急人道援助を実施することを計画しました。計画自体は空爆終了に伴い難民がコソボへ帰還したため実現には至りませんでしたが、この「キャンプ・ジャパン」計画の経験から、緊急援助実施に関するいくつかの教訓が得られました。
「キャンプ・ジャパン」計画では、危機発生直後の早い時期からNGOが現地入りし、ニーズ調査及びキャンプ設営準備をおこなうことができたため、具体的で精緻なプランを迅速に作成することができました。政府機関に比べて外交的・政治的制約の少ない民間団体であるNGOだからこそ、危機発生後すぐに現地入りすることができ、このことはNGOの強みのひとつと言えます。
また、複数のNGO及び政府が協力することによりお互いの弱点をカバーする方法が模索されたが、その過程で国際的に通用する支援活動をおこなうには、NGOと政府間の協力だけでなく、経済界、メディア、学識経験者等の他のアクターとの協力が不可欠であることが認識されるようになりました。
難民の大量発生や大規模な自然災害に資金と実行計画を備えておくための
「ジャパン・プラットフォーム」構想へ
「キャンプ・ジャパン」計画での教訓から、NGO、経済界、政府(外務省)が対等なパートナーシップの下、三者一体となり、それぞれの特性・資源を活かし、緊急援助のより迅速かつ効果的な実施という一つの目的に向かって連携・協力していくための新しい枠組みである「ジャパン・プラットフォーム」構想が考案されました。「ジャパン・プラットフォーム」では、難民の大量発生や大規模な自然災害に備えて、NGO・民間企業等の各アクターのノウハウ・資源を活かして、緊急支援のプランづくりや、緊急援助物資の備蓄といったスタンバイ機能の整備を行いました。また、外務省ODA資金による基金の設置や、民間寄付の募集を通じて、財政的な基盤の弱い日本のNGOを資金的にサポートすることも目指しています。