終了レポート:JPF第6回メディア懇談会『福島7年目の現場から ~心のケアをつなぐ3つの提案』(JPF復興庁コーディネート事業報告)
ジャパン・プラットフォーム(JPF)は2018年2月13日、第6回メディア懇談会「福島7年目の現場から~心のケアをつなぐ3つの提案~」を開催しました。
本懇談会では、福島県浜通りの避難指示解除地域における被災者に対する"心のケア"にまつわる最新の現状と課題をテーマとしました。
現状について報告させていただいたのは、ジャパン・プラットフォーム(JPF)と世界の医療団(特定非営利活動法人 メドゥサン・デュ・モンド ジャポン/MdM)。JPFは2017年8月より、復興庁の「被災者支援コーディネート(CDN)事業」を開始し、取り組む課題分野の一つとして、"心のケア"分野における課題解決型ネットワーク構築の活動を実施しています。また、JPF加盟NGOであるMdMは2014年1月から、JPF「共に生きる」ファンドを活用し、精神科医や保健師などとともに福島県浜通りで、現地のパートナー団体である「相馬広域こころのケアセンターなごみ」と共に心のケアに関する支援を継続してきました。このMdMと心のケアセンターなごみとの連携は、国際NGOが持つ国際的基準であるWHOの指針に則った活動経験と、地域NPOの持つ住民コミュニティと繋がった活動がうまく結びつき、より効果的な支援につながった良い例だと言えます。
本懇談会では現場で活動し続けるスタッフや専門家がテーマについて発表させていただき、メディア10名、専門家1名に加え、オブザーバーとして復興庁からもご参加いただき、活発な議論を交わすことができました。
冒頭のテーマ「JPF復興庁コーディネート事業と福島における"心のケア"のフェーズの移り変わり」を担当したJPF地域事業部 リーダーの山中努は、2011年から支援をする中で見えてきた孤立などの問題は複雑に絡み合っていること、JPFは5つの分野を洗い出して重点的に支援をすると決めたこと、その1つが心のケアであることなどを報告しました。山中は、心のケアは被災者だけに求められているのではなく、2011年から支援を続けている支援者向けの心のケアも重要だと訴えました。
続いて、「福島「心のケアをつなぐ3つの提案」の目指すもの」についてお話したのは、MdMの玉手幸一氏。参加者の手元には、JPF「共に生きる」ファンドの助成を受けて作成した『福島のこころ』が配られ、3つの提案の背景について説明されました。心のケアセンターなごみ/福島県立医科大学の大川貴子氏は、「震災直後はいろんなところからいろんなところに支援が入ってくれた。でも、多くの人が2年、3年で元のところに戻っていきました」と話し、支援を必要としている人は少なくなっているわけではないにもかかわらず、マンパワーを確保することの難しさを訴えました。また、高齢化率が4割近くになっている川内村(福島県双葉郡)では、認知症になっても安心して暮らせる地域作りをめざして、声かけやおかずのおすそ分けなどを通して認知症の方を気に掛ける取り組みをしていることについて発表がありました。
また、MdMが制作したビデオの中では、「インフラの整備がまだまだ追いついていないこと。福祉サービスが村に全然ないこと。そういう中で高齢者などが戻れるかというと戻れないであろうこと。今は元気な高齢者が多いが、これから高齢化を迎えるにあたって問題が生じること」などなど、福島の方々の生の声が伝えられました。支援に入っている人が被災者の声をキャッチできる仕組みがこれからもきちんと保障されていくことが、メンタルヘルスを守る上で重要という言葉もありました。
報告後の質疑応答では、「岩手や宮城でお医者様から話をうかがったが、かなりの方が精神面での手当てが必要にもかかわらず、それを促すと多くの方が拒むそう。レッテルを貼られることに対する嫌悪感があるという状況が福島でもあるか?だとすれば個別に回っていくような攻めの体制が必要なのか?」という質問に対して、「精神科の先生です」と言わずにいろんな活動を一緒にやっていく中で「精神科医とか精神科医療って特別なものじゃないんだ」とわかってもらう工夫をした体験などが紹介されました。そのほかにも行政との距離感や医師不足の現状などに関して意見が交わされました。
東日本大震災から8年目を迎える中、JPFは、被災地域の人道課題を慎重に見極め、地域のニーズ・主体性を最大限尊重しながら、岩手、宮城、福島三県で活動を継続していきます。また、今回の主要テーマであった特有の課題を抱える福島においては、引き続き支援を強化・見直しながら、緊急人道支援を必要とする人々に寄り添ってまいります。その中で、メディアの方々の発信力もお借りできたら幸いです。
写真はすべて©JPF