国際協力NGOジャパン・プラットフォーム(JPF)

紛争や災害時の緊急人道支援を行うNGO組織 ジャパン・プラットフォーム

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お知らせ

イベント 2015年08月21日

ジャパン・プラットフォーム/Mercy Corps共催「緊急人道支援ワークショップ2015」(11/30~12/4 米国・オレゴン州)参加者募集

おかげさまで盛況のうち終了いたしました。
ご参加いただいた皆さま、関係者の皆さまに心より御礼申し上げます。

イベントレポート

開催前日は9名のNGOメンバーが米国到着後にブリーフィング

11月30日から開催された「緊急人道支援ワークショップ2015」(ジャパン・プラットフォーム(JPF)が「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」の一環として、米国のNGOMercyCorpsとの共催で実施)に日本のNPO/NGOメンバー9名が参加しました。
前日29日(米国現地時間)に現地ポートランド入りして勢揃いした参加者らは、その日の夜にホテル近くのレストランにて顔合わせ会とブリーフィングに参加、本プログラムの趣旨やドナー、また、JPFのNGO能力強化事業について理解を深めました。今回お互いに初めて顔を合わせるという参加者がほとんどでしたが、本ワークショップへの参加理由や現在の担当業務内容のシェアを行うと、いっきにフランクな雰囲気が生まれ、翌日からの1週間へ向けてそれぞれがより一層の意欲と士気を高める前夜となりました。

開催前日は9名のNGOメンバーが米国到着後にブリーフィング

番外編①:Keep Portland Weirdに続く

番外編①:Keep Portland Weird

ジャパン・プラットフォーム(JPF)は「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」の一環として、11月30日からの1週間、米国のNGO Mercy Corpsとの共催で「緊急人道支援ワークショップ2015」を開催しました。場所は米国西海岸のオレゴン州、ポートランドにあるMercy Corps本部。この季節のポートランドは気温が10度に届かず雨や曇りの日が多いのですが初日は朝から見事な青空が広がりました。ホテルからの道中、目に飛び込んできたのが「Keep Portland Weird(ポートランドは風変りな町で居続けよう)」と大きくペイントされた壁。

これはポートランドの人が掲げているスローガンで、「変でいることが好き」、「とにかく生きていることを楽しもう!」ということを表したものです。全裸で自転車に乗るイベントが行われたり、オリジナリティ溢れるお店が多かったり。もちろん道行く人も、おもわず目をみはるような格好や行動をしていたりと、実に個性的。最近、「全米ベストシティランキング」1位に輝いたのは、単にビールが美味しくて消費税が0%でエコを推奨しているというだけでなく、"へんてこりん"なところを歓迎する"優しさ"がその理由なのでしょう。毎日朝から晩までセッションが詰まった研修ですが、移動中や夜ご飯の時間にポートランドのそんなところも楽しむことができた1週間でした。

番外編①:Keep Portland Weird

番外編②:ポートランド名物「Voodoo Doughnut(ヴードゥー・ドーナツ)」に続く

番外編②:ポートランド名物「Voodoo Doughnut(ヴードゥー・ドーナツ)」

今日は、今月初めに米国のNGO Mercy Corpsとの共催で開催した「緊急人道支援ワークショップ2015」番外編②をお届けします。先日お伝えしたとおり、本ワークショップの開催場所は米国西海岸のオレゴン州、ポートランド。皆さんはこの街の名物、「Voodoo Doughnut 1(ヴードゥー・ドーナツ)」をご存知でしょうか。

このドーナツ、写真のとおりトッピングが異常に多かったり(または異常にカラフルだったり)と、一瞬気がひけそうなものばかりですが、れっきとしたポートランド市長公認のスイーツ。また、お店は同市を代表する観光名所として地元民や観光客が毎日行列をなすほどです。参加者らは毎朝このお店の前を通って研修会場へ向かっており、興味はあるもののなかなか手を出せずにいたところ、なんとワークショップ4日目に講師からこのドーナツが差し入れられました!

今や全米住みたい街No.1の地位を得ているポートランドですが、20-30年前まではダウンタウンの空洞化に伴い、郊外や周辺都市に豊かな人々が、ダウンタウンには低所得者が住むという都市構造ができていたそうです。そんなダウンタウンにドーナツ屋さんが無かったことから、2人の若者が独自にドーナツを研究して創業したのが始まりと言われています。

このドーナツもポートランドもすっかり国内外で注目を集めるようになった今日(東京都内にもショップオープンの予定があるという噂も!)、そんな楽しく前向きなこの地でワークショップを受けられる喜びを、ドーナツとともに噛みしめました。

番外編②:ポートランド名物「Voodoo Doughnut(ヴードゥー・ドーナツ)」

1日目午前:いかにあるべきか 夏川知輝(HuMA)に続く

いかにあるべきか

張り詰めた
冬の空気で
引き締まる
容易ならざる
人道支援

ネイティブ・スピーカーでも60時間を要するとされる本ワークショップの事前課題を120時間掛けて終了させ、期待と不安の中、初日が始まりました。
参加者の自己紹介はアイスブレーキングを兼ねて、質問表にある項目を様々な参加者にインタタビューし、スタンプラリーのように回答をうめていく形式でした。短い会話ではありますが個々の参加者と直に話す機会となりその方の人となりが印象に残るいい経験でした。
ワークショップの最初の項目として、スフィア(※1)にも謳われる「人道支援の背景」、「人道支援の原則」について、経験豊富な講師(MercyCorpsスタッフ)の実体験を交えて、それらの重要性と原則に沿った活動の難しさが共有されました。特に、現在進行形であるシリアの紛争における「偏らない人道支援」の難しさに接し、当事者だけでなく、今を生きる全ての人が共有し解決を図るべき課題であると感じました。

夏川 知輝
(特活)災害人道医療支援会(HuMA)

※1)スフィア
人道機関は、国際人道法や人権法、難民法の規定に反映されている、被災者の権利の中でも「尊厳のある生活への権利」「人道援助を受ける権利」「保護と安全への権利」の3つに基づいて、被災者すべてに支援というサービスを提供するとされており、これらの権利を実現するために、人道援助を行うNGOのグループと国際赤十字・赤新月運動によって1997年に開始されたのが「スフィア・プロジェクト」(または「スフィア」)である。冷戦終結後の1990年代、世界各地で内戦が頻発する中、国際機関やNGOが行なう人道支援は、確かな役割を果たす一方で、支援が軍事目的に転用されるなど、紛争の長期化・複雑化に与える悪影響が指摘された。この課題に取り組むため、スフィアでは人道憲章の枠組みに基づき、生命を守るための主要な分野における最低限満たされるべき基準「スフィア・スタンダード」を定めて、「スフィア・ハンドブック」にまとめた。

1日目午前のセッション内容

  • Objectives/Agenda/Methodologies/Introductions
  • Explanation of Humanitarian Exercise
  • Introductions of participants
  • Recommendations for Engagement
  • Provide a security briefing about Portland, building, etc
  • The Humanitarian Context
  • Humanitarian Principles

いかにあるべきか

1日目午後:自分も大事に。優先するのは"自分の心の声" 稲葉基高(HuMA)に続く

自分も大事に。優先するのは"自分の心の声"

まだ緊張の残る1日目の午後は主に、「危機管理」や「ストレス対応」などについて学びました。緊急援助の現場では自分自身にも強いストレスがかかります。それに押しつぶされないために自分自身がリラックスするための小物(例えば音楽,本,運動道具など)を持っていくという話をとても興味深く聞きました。ただし、現場でリラックスするということとメンバーの危機管理の概念には相反する部分もあり、自分が現場を指揮する立場であればそのバランスが重要であると感じました。「時に現場では同時に多くの仕事が発生し、優先順位を決めなければならない。でも最後に従うのは自分の心だ。」という講師(Mercy Corpsスタッフ)の言葉が心に響きました。

稲葉 基高
(特活)災害人道医療支援会(HuMA)

1日目午後のセッション内容

  • Humanitarian Principles (continued from the morning session)
  • Your Inner Context
  • Safety and Stress Management

力を合わせて、被災者を救う

2日目午前:力を合わせて、被災者を救う 山下公子(HuMA)に続く

力を合わせて、被災者を救う

2日目の午前は座学がメインで、人道プログラムサイクル(※1)やクラスター(※2)間の連携、人道支援に欠かせない資金についてなど、前日に引き続き人道支援の基礎から学ぶ講義が続きました。これらの講義に共通する目標は、人道支援にかかわる多くのNGOを含めた団体が密に連携をとり、被災者に対し漏れなく迅速にできるかぎりの支援を行うことです。一人の力、一つの団体だけではできることは限られ、他が見えなくなってしまう危険があるため、広い視野を持ち多くの支援者と手を取り合って全体として患者のための活動ができるよう努力することが肝要です。さらにスフィア(※3)やコード・オブ・コンダクト(※4)など、今回の研修で学んだような人道支援における基本理念や世界基準を共通言語としてきちんと持つことができていれば、連携が容易となるでしょう。

山下 公子
(特活)災害人道医療支援会(HuMA)

※1)人道プログラムサイクル
「1.支援ニーズの調査と分析」、「2.戦略対応計画の策定」、「3.資源の動員」、「4.実施とモニタリング」、「5.活動業務の見直しと評価」という5つの要素から成る人道支援を行う際のプログラムサイクル。各要素がそれぞれその前の要素をもとに構成され、また次の要素へつながるよう、切れ目のないサイクルで人道支援を行うことが大事とされる。

※2)クラスター
国際人道支援の現場において、分野ごとに得意な団体が連携、形成して支援の重複やギャップを避けるアプローチのことを「クラスター・システム」と呼び、主に食料安全保障、キャンプ調整及び運営、早期復旧、教育、緊急シェルター、緊急通信、保健、輸送、栄養、保護、水と衛生の11分野のクラスターが存在する。

※3)スフィア
人道機関は、国際人道法や人権法、難民法の規定に反映されている、被災者の権利の中でも「尊厳のある生活への権利」「人道援助を受ける権利」「保護と安全への権利」の3つに基づいて、被災者すべてに支援というサービスを提供するとされており、これらの権利を実現するために、人道援助を行うNGOのグループと国際赤十字・赤新月運動によって1997年に開始されたのが「スフィア・プロジェクト」(または「スフィア」)である。冷戦終結後の1990年代、世界各地で内戦が頻発する中、国際機関やNGOが行なう人道支援は、確かな役割を果たす一方で、支援が軍事目的に転用されるなど、紛争の長期化・複雑化に与える悪影響が指摘された。この課題に取り組むため、スフィアでは人道憲章の枠組みに基づき、生命を守るための主要な分野における最低限満たされるべき基準「スフィア・スタンダード」を定めて、「スフィア・ハンドブック」にまとめた。

※4)コード・オブ・コンダクト
スフィア・プロジェクトのガイドブック巻末に付してある「災害救援における国際赤十字・赤新月運動およびNGOのための行動規範」。

2日目午前のセッション内容

  • Review of Day 1
  • Humanitarian Program Cycle and Assessments
  • The Cluster System
  • Humanitarian Funding Mechanisms

力を合わせて、被災者を救う

2日目午後:「準備不足」「困惑」「混乱」の現地入り 西田亜理沙(JEN)に続く

「準備不足」「困惑」「混乱」の現地入り

座学の多かった午前中とは打って変わって、頭をフル回転する午後となりました。
セッションは2つあり「スフィア・スタンダード(スフィア(※1)によって策定された基準)の復習」と「緊急人道支援の現地入りシミュレーション訓練」が含まれていました。

スフィア・スタンダードとは、簡単に説明すると「災害や紛争の被害者が適切な保護を受け、安全が確保され、尊厳のある生き方をするために、人道支援に関わる全ての人間が現場で配慮し、守るべき行動規範および最低基準」です。すでに数多くの人道支援の現場で活用されており、ワークショップ参加者の多くが利用したことのあるものであったため、すべての基準が記載されているスフィア・ハンドブック(※1)を用いて、簡単なおさらいをしました。例えば、「1つのトイレを利用すべき最大人数は何人か」、「1日に必要な飲料および生活用水は一人当たり何リットルか」、「シェルターを用意する場合は現地の文化を配慮し、何別に空間を分ける必要があるか」等の質問が出され、ハンドブックをめくって答えを探します。参加者の中には担当分野の基準がすでに頭に入っていて、ハンドブックを参照せずとも即答している人もいました。

「準備不足」「困惑」「混乱」の現地入り

私も、担当したことのある支援分野に関する知識はありましたが、他分野となると知らないことばかりです。それでもその分野で支援をする可能性はゼロではないので、日ごろよりスフィア・ハンドブックを開き、知識を深める必要があると痛感しました。とはいえ、本の中にある基準はあくまでも基準。支援現場の状況が悪すぎて、守りたくても守れない基準、或いは守らなくても良い基準が出てくることもありますので、基本は大事にしつつ、臨機応変さも培い、その場に応じた指標を設定する必要があると考えました。

さて、このような多少のジレンマを抱えながら、スフィア・スタンダードを順守するメリット、デメリットについて思いを巡らせていたらいつの間にか次のセッションであるシミュレーションが開始されていました。

シミュレーションは、全参加者が4つの仮想NGO(以下「チーム」)に振り分けられ、人道支援ニーズが高まっているウクライナ東部のドネツクに派遣され、各チームの強み(生計回復、教育、水・衛生、保健)を活かした人道支援活動を計画し、実施するという設定で行われました。先に結果を言いますと、「準備不足」「困惑」「混乱」というキーワードが強く心に残っています。

「準備不足」「困惑」「混乱」の現地入り

各チームが情報収集を進める中で、突然、全チームメンバー約15名の中から代表者1名が15分で現地の状況や支援ニーズに対する報告をするようにというアナウンスがあり、どの参加者もさらに焦りを感じているのが良く分かりました。シミュレーションを考案した講師(Mercy Corpsスタッフ)から締めくくりに、「チームメートを良く知ること」「最初にリーダーと各チームメートの役割を決めること」「情報収集は手分けして効率よく行うこと」「アクター(現地の反政府組織や現地で既に活動中の国連組織、NGO等)への質問を事前に良く吟味すること」「他NGOとも協力や調整をすること」など重要なポイントが挙げられました。しかし、私が所属していたチームは「被害者の声を聞きにいく」以外は上記のどれも検討せず、全員一緒に情報収集を進め、行き当たりばったりの状態が最後まで続きました。ドネツク、所属チーム、チームメートに関する知識がゼロに近く、どのように情報収集していくかの戦略も不明確なままでした。

「準備不足」「困惑」「混乱」の現地入り

「混乱とストレスを感じてほしかった」と講師は言っていましたが、大いに期待に応えられたような気がします。また、本当の現場は、比較できないくらい混沌としていることが容易に想像できますので、さらにストレスレベルが上がったのを覚えています。同時に、準備不足を否めませんでしたので、今日のシミュレーションの続きと総仕上げが行われる本ワークショップ最終日へ向けて、準備に力を入れ、今回洗い出された改善点を強く意識しながら明日以降のセッションを受けなくては、と気を引き締めることが出来ました。

西田 亜理沙
(特活)ジェン(JEN)

※1)スフィア
人道機関は、国際人道法や人権法、難民法の規定に反映されている、被災者の権利の中でも「尊厳のある生活への権利」「人道援助を受ける権利」「保護と安全への権利」の3つに基づいて、被災者すべてに支援というサービスを提供するとされており、これらの権利を実現するために、人道援助を行うNGOのグループと国際赤十字・赤新月運動によって1997年に開始されたのが「スフィア・プロジェクト」(または「スフィア」)である。冷戦終結後の1990年代、世界各地で内戦が頻発する中、国際機関やNGOが行なう人道支援は、確かな役割を果たす一方で、支援が軍事目的に転用されるなど、紛争の長期化・複雑化に与える悪影響が指摘された。この課題に取り組むため、スフィアでは人道憲章の枠組みに基づき、生命を守るための主要な分野における最低限満たされるべき基準「スフィア・スタンダード」を定めて、「スフィア・ハンドブック」にまとめた。

2日目午後のセッション内容

  • Intro to Common Sector Specialties in Sphere
  • First Humanitarian Exercise (Simulation)

3日目午前:複合的な視点から支援を適切に届けるための保護・Do No Harmの概念について 土川大城(AAR)に続く

複合的な視点から支援を適切に届けるための保護・Do No Harmの概念について

3日目午前中のメイントピックは主に緊急人道支援におけるプロテクション(保護)の概念と"Do No Harm"についてでした。

緊急人道支援に携わる人々は、教育、水衛生、住居、食糧などといった特定の分野に絞った事業を実施する事が多いのですが、その全ての分野において共通すべき概念がプロテクション(保護)です。即ち支援が必要とされている人が適切に支援を受けられているか、また支援の結果として副次的な負の影響がないか等の観点です。例えばトイレが住居からあまりにも遠くに設置され、そこで女性が襲われたりする可能性はないか、障がいをもつ人や母子家庭の人たちも食糧配布や水の供給を適切に受けられているか等がきちんと考慮されないと、支援を必要とする人に支援が届かなかったり、最悪の場合、悪影響を与える可能性もあります。これらの概念・観点をプロテクションの専門家である講師(Mercy Corpsスタッフ)が解説してくれました。

複合的な視点から支援を適切に届けるための保護・Do No Harmの概念について

またその後は、人道支援における重要な観点である "Do No Harm"(支援の副作用として人々や社会にたいして悪影響を及ばさないようにする取り組み)について学びました。中でも大きなポイントはどのような要素が社会の分断のきっかけになるか(例:特定民族の密集地域だけで支援を行うと、民族分断につながる可能性がある)、また逆にどのような既存の社会の仕組みや要素が、社会の結束を強める可能性があるのか(例:既存の首長制の承認・維持)など、緊急人道支援が本当に適切に行われるために考慮すべき重要な観点を学ぶことができました。

複合的な視点から支援を適切に届けるための保護・Do No Harmの概念について

土川 大城
(特活)難民を助ける会(AAR Japan)

3日目午前のセッション内容

  • Review of Day 2
  • Understanding the General Principles of Protection
  • Analyzing the Context for Connectors and Dividers (Do No Harm)

3日目午後:改善、精進、常に向上、さらにイノベーション! 清水貴子(PWJ)に続く

改善、精進、常に向上、さらにイノベーション!

3日目午後は、裨益者参加型アプローチ、そしてセキュリティマネジメントに関するセッションでした。

支援業界には、基準やガイドラインだけでなく、有用なツールも増えています。裨益者参加型アプローチのセッションでは、そのツールのひとつ、「Good Enough Guide」(※1)の活用方法をグループに分かれてロールプレイで模擬練習しました。

改善、精進、常に向上、さらにイノベーション!

セキュリティマネジメントのセッションでは、NGOの観点から掘り下げたAcceptance、Protection、Deterrenceの3点についてレクチャーが行われました。
一点目のAcceptanceでは、裨益者コミュニティから受け入れられることの重要性。二点目のProtectionでは、自分達の身を守るということは、ただ単に身のまわりを防弾壁や通信機器で固めるだけではなく、スタッフ労務等オフィス業務管理の質を高める事も含まれ、そうすることで随分と安全性が向上するという事。三点目のDeterrenceについても、警察やPKOの武装保護を付けるだけでなく、例えばNGO同士で集まってアライアンスを組むなど、現地政府・反政府への影響力強化が有効であるという事。これらは、一般的なセキュリティ研修(強盗や誘拐への対応として行う疑似訓練)では学んだことのない要点ばかりで、勉強になりました。

改善、精進、常に向上、さらにイノベーション!

3日目の最後には、Mercy Corpsが近年力を入れているイノベーション部門(レジリエンス、キャッシュ・トランスファー・プログラミング、環境エネルギー分野)スタッフとの懇親の場が設けられ、緊急と開発の両分野における支援の実践例が共有されました。たとえNGOであっても、団体・活動規模が大きくなり歴史を積むほどに過去の成功例に固執することがあります。果たして、そうすることで小回りが利かなくなり、新しい分野の活動やアプローチにトライする機会が減る恐れもあります。しかし、Mercy Corpsスタッフは決してそうではなく、このイノベーションの文化を大事にしているということを感じました。

改善、精進、常に向上、さらにイノベーション!

通常業務の中で時間は限られますが、まずは現地駐在員と提携団体スタッフを対象に、今回学んだトピックの理解を広げたいと思います。

清水 貴子
(特活)ピース ウィンズ・ジャパン(PWJ)

※1)Good Enough Guide
緊急人道支援にあたる多忙な現場スタッフが、活動のあらゆる段階において、支援団体が実際に活動の効果を測定し、アカウンタビリティを実現することができるよう、過去に実践して有効だった方法や具体的な取り組み方を紹介、解説したもの。多くの事業評価分析の結果、被災者が関わることで支援事業はより効果的になり、質の高い緊急人道支援活動が可能になることがわかっている。

3日目午後のセッション内容

  • Protection in Programming and Gaining Beneficiary Perspectives
  • Acceptance in Security

4日目午前:政治経済が混乱した状況下でのNGOの動き方 岩下奈未(ICAN)に続く

政治経済が混乱した状況下でのNGOの動き方

4日目午前中は、"Reduced Access Programming"、"Negotiation Skill"、"Measuring & Learning in Emergencies"という3つのテーマでそれぞれ講義を受けました。

"Reduced Access Programming"では、政治や経済が混乱し様々なアクセスが制限されている地域・環境下での活動の進め方について学びました。政府が機能し経済的なアクセスがある国と比べ、シリアやイラクといった政治的・経済面で混乱が起きている環境下では、安全面の管理がより重要であり、物資提供といったNGOの主たる活動そのものと同じくらい重きを置く必要があります。
講義では、安全及び活動のリスクを減らしていくためのフレームワークや、「物事を単純に保つ」「全てをやるべきかどうかを自分自身に問う」といった12個の行動基準が紹介されました。

"Negotiation Skill"では、反政府軍との交渉について学びました。人道支援を行う際は、政府側だけでなく、反政府軍との関係づくりも重要になります。その際、交渉スキルというものは非常に大切です。例えば反政府軍と話をするときには、NGOが政府側を支持しているわけではないということを明確に示す必要があります。
講義では他に、決して一方的ではなく、必ず双方向のコミュニケーションを行って関係づくりを行い、相手側の利益や要望を把握した上で、正当性のある着地点を見つけることといった、反政府軍との合意形成時における要点が強調されました。

午前中最後の"Measuring & Learning in Emergencies"では、緊急人道支援活動の評価について学びました。人道支援がどう現地へ影響を与えたかという事実は、資金提供者・裨益者・政府等、様々なアクターにとって必要な情報です。Mercy Corpsでは支援を受けた世帯・個人の数とともに、支援により何らかの状況の変化があった世帯・個人も評価の対象とし、数をカウントしてデータ化しています。その他にも外部の評価チームを雇うなどの評価方法が提示されましたが、中でもソーシャルメディアを利用した支援内容の評価調査は印象的でした。

岩下 奈未
認定NPO法人アイキャン(ICAN)

4日目午前のセッション内容

  • Review of Day 3
  • Reduced Access Programming
  • Skills for Negotiating Access in Humanitarian Emergencies and Complex Crises
  • Measuring and Learning in Emergencies

政治経済が混乱した状況下でのNGOの動き方

4日目午後:社会からの尊敬を集められる組織 今村恭介(BAJ)に続く

社会からの尊敬を集められる組織

4日目午後は、レジリエンスのワークショップからスタートしました。レジリエンスとは、災害等のショックやストレスに適応して早期に回復する力です。コミュニティーのレジリエンスを高めることで、これから起こりうる緊急事態に備え、ショックやストレスを軽減することができます。また支援をすればするほどコミュニティーのレジリエンスを下げてしまうこともあるため、コミュニティーを支援する際には、コミュニティーの脆弱性を下げる一方で、能力を上げ、レジリエンスの向上につながるよう長期的な展望を持つことが重要とのことでした。

社会からの尊敬を集められる組織

その後、経験豊富な5人のMercy Corpsスタッフを迎えてのスペシャルパネルが行われ、参加者たちからは様々な質問が投げかけられました。災害等の緊急時において、組織の拠点がない国でどのようにローカルスタッフを採用し、まとめていくか、Humanitarian workerとしてどのように自分のモチベーションを保っていくか、現場と本部間での考えの違いをどのように調整していくか等、経験に裏打ちされた貴重な話を聞くことができました。

社会からの尊敬を集められる組織

そして、4日目の全セッション終了後はMercy Corpsで月に一度行われているハッピーアワーに参加しました。普段からMercy Corps本部でのボランティアに参加している人たちへの感謝の場です。たくさんの地域の方がボランティアとして協力しているとのことですが、中には半年で計500時間もボランティア作業に従事した方もいました。その方に、Mercy Corpsでボランティアとして協力する理由を聞いてみたところ、Mercy Corpsの活動を尊敬しているからとのことでした。あらためて市民社会に認められ、支えられることがNGOには重要であると感じました。そして、Mercy Corpsが地域の方々の尊敬を集められる所以の一つは、スペシャルパネルに登場したような優秀なスタッフの日々の活動によるものだと思った4日目の午後でした。

今村 恭介
(特活)ブリッジ・エーシア・ジャパン(BAJ)

4日目午後のセッション内容

  • Resilience in Humanitarian Programming
  • PANEL

5日目:トレーニングの最終日 田多晋(JAR)に続く

トレーニングの最終日

5日目はこれまで学んだ内容を総動員しての、シミュレーションを実施しました(2日目午後の続きです。※詳細は「2日目午後:「準備不足」「困惑」「混乱」の現地入り」をご覧ください。)。現実の紛争状況を題材にして、多様な関係団体が抱える利害や、持っている情報も様々に異なる状況の中、適切に裨益者のニーズを把握し、どのような支援を計画するかを考えなければなりません。これまでいろいろな理論やツールについて学んだとはいえ、それを実際の現場で実践するとなると、頭が真っ白になるくらい何をすればよいかわからない状況でした。それでも他のチームメンバーと一緒に、ニーズを把握するために誰に何を聞いたらよいか考え、聞いた内容を確認して状況を把握し、それから自らのチームである団体の強みを生かせる支援内容を考えていきました(結果、私たちのチームでは衛生キットを配布するという支援内容になりました)。このシミュレーションを通じて、セキュリティはどうなっているか、支援の水準はどうあるべきか等、学んだ内容を生かした議論ができ、まさに実践的な経験となりました。

トレーニングの最終日

田多 晋
(特活)難民支援協会(JAR)

5日目のセッション内容

  • Review of Day 4
  • Humanitarian Exercise (Simulation continued from the Day 2)

締めくくり:参加者全員で無事にワークショップを修了!に続く

参加者全員で無事にワークショップを修了!

5日間のワークショップは、まさに5日間で学んだことをフルに生かすべく構成された、総仕上げのシミュレーションをもって、幕を閉じました。

参加者全員で無事にワークショップを修了!

本ワークショップには、日本からは7つのNGOを代表する9名、Mercy Corpsからはポートランド本部やワシントンD.C.、イギリスのオフィスから集った6名が参加しました。ファシリテーターの面々もMercy Corpsのウガンダ、ソマリア、ナイジェリア、ニジェール、ジャカルタ、カシミール等のオフィスから集まったということもあり、実に多様な人道支援経験に基づいたセッションが次から次に行われ、参加者にとって刺激的な時間となったようです。もちろん、参加者間での経験のシェアもふんだんに行われ、普段はそれぞれがそれぞれの得意とする分野で活動していますが、改めて「人道支援」という大きな旗印の元、ミッションを共にしていると感じる「仲間」ができたことは言うまでもありません。

参加者全員で無事にワークショップを修了!

帰国後、参加者からは「本ワークショップで最も心に刻んだこと」として以下のように寄せられました。
「尊厳をもって生命を守ること。」
「人道支援を要する状況は混乱そのものであり、裨益者を含むすべての関係ステークホルダーは、常に何が起きているのかを確実に知らされていることが重要である。」
「人道支援には、裨益者、NGO、政府など幅広い個人、機関すべてとの連携調整が欠かせない。」

参加者全員で無事にワークショップを修了!

今回学んだ「人道支援」に必要な基礎の概念や取りくみ手法、スタンダードは各自が所属団体のスタッフに共有することで熟成させ、ポートランドで新たに生まれた「仲間」というネットワークと共に、今後の(起こってはならない)人道危機の場面や現場で、存分に生かされることと思います。

谷口裕子
(特活)ジャパン・プラットフォーム(JPF)

イベント概要

ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、2013年より実施している「TOMODACHI NGO リーダーシップ・プログラム」(※1)の一環として、緊急人道支援に関するワークショップを、2013年は米国・オレゴン州・ポートランド、昨年は日本(埼玉県)で開催してまいりました。そして本プログラムが最終年となる今年、ポートランドに再び場所を移して、「緊急人道支援ワークショップ2015」を11月30日~12月4日の日程で開催することになりました。

本ワークショップは、緊急人道支援において重要とされるさまざまな知識や国際スタンダードを学んでいただくことにより、緊急人道支援に携わる皆様が、より効果的な活動を実施できるようになることを目的としています。「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」による開催がフィナーレとなる今回は、過去2回(※2)の開催時と同じく、緊急人道支援NGOに最も必要と考えられるもの、且つ、その2度の開催によって積み上げたノウハウや、その当時の参加者フィードバック、トレンド等を総合的に反映した研修内容で参加者を迎えるべく、検討・協議を重ねてまいりました。その結果、プログラム内容は以下のように決定いたしましたので謹んでご案内します。

尚、本ワークショップには、米国のNGO団体マーシー・コー(Mercy Corps)のスタッフも参加することになっており、他国の緊急人道支援についての知見やネットワークを広める貴重な機会となることが期待されます(韓国、台湾、中国のNGOからも若干名の参加が予定されています)。

以上、下記の応募条件や研修の概要(暫定)をご確認の上、奮ってご応募ください。

(※1)「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」について:
「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」とは、米日カウンシル(US-Japan Council)主導のTOMODACHI イニシアチブ、ならびにJ.P.モルガンの支援を受け、JPFが米国のNGO団体マーシー・コー(Mercy Corps)とのパートナーシップのもとに実施している研修事業です。東日本大震災におけるNGOの支援活動から得られた貴重な経験や教訓を活かし、日本のNPO/NGOが国内外でより効果的な人道支援活動を行うための能力強化を目的としており、2013年4月~2016年3月までの3年間で、人道支援に関するさまざまな研修を計画、実施しています。

(※2)過去実施分の様子はこちらからご覧いただけます。
2013年 http://www.japanplatform.org/contents/NGO-leadership/20130922.html
2014年 http://www.japanplatform.org/info/2014/07/181824.html

◆◆J.P. Morgan & TOMODACHI Initiative X Mercy Cops & Japan Platform◆◆
MC-JPF Humanitarian Response Workshop 2015
-Helping to Save Lives and Protect People-
at Mercy Corps HQ, in Portland, Oregon, U.S.A.
November 30 - December 4, 2015

募集要項

期間 2015年11月30日(月)~12月4日(金)
※この日程には、出発・帰国日は含まれていませんのでご注意ください。
内容
  • The Humanitarian Context
  • Humanitarian Principles
  • Humanitarian Assessments
  • Humanitarian Coordination
  • Humanitarian Funding Mechanisms
  • Understanding the general principles of protection
  • Protection in programming and Beneficiary perspectives
  • Staff Security
  • Program Management in Emergencies
渡航先 米国・オレゴン州・ポートランド
費用 無料
※米国往復航空運賃(上限あり)、米国国内宿泊費、ESTA(渡航認証)申請費用、保険料、米国滞在期間の日当(注)はJPFが負担します。
注)日当はMercy Corpsの規定額に基づき、米国ドルで支給されます。
定員 若干名
※厳正な審査の上、参加者を決定します。
応募資格/条件
  • Must be employed by the NGO for at least 1 year and intend to remain employed by that NGO for the foreseeable future.
  • Must be endorsed by the applicant's employing NGO.
    (Must be acknowledged by SG/CEO signing his/her name to the signature on the application form.)
  • Must have prior experience as an emergency responder.
  • Must have strong English communication skills.
  • Must agree to remain with the group for the entirety of the trip - and to attend planning and debrief meetings before and after.
  • Must complete the pre-training assignment which includes five 1-3 hour modules and submit it by Nov. 15.
  • Need to complete feedback form and submit it by the due date upon return.
  • Need to bring the learnings from the training back to their organization and utilize skills to enhance organization operation.
  • Need to engage in providing materials for columns/articles in Newsletter and websites.
Note: Prior to the training, applicants are required to be registered in Japan Platform's DR+ portal of DisasterReady (http://www.disasterready.org/japan-platform). If you are not yet users of the portal, please request to training@japanplatform.org when applying.
応募方法 応募用紙をメールにてお取り寄せいただきすべてご記入の上、応募受付期間内にお送りください。
応募用紙取り寄せ&応募受付先:training@japanplatform.org
お取り寄せのご希望を承りました後、応募用のwordファイルをお送りいたします。
応募受付期間 2015年8月19日(水)~ 9月18日(金)正午
※締切厳守

本件に関するお問い合わせ先

特定非営利活動法人(認定NPO法人)ジャパン・プラットフォーム

NGO能力強化研修プログラム担当:鈴木、谷口
E-mail:training@japanplatform.org
〒102-0083 東京都千代田区麹町3-6-5 麹町GN安田ビル 4F
TEL:03-6261-4751(事業部直通) 代表:03-6261-4750 FAX:03-6261-4753

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