現在、世界最大の人道危機といわれている、シリアにおける内戦。国連人道問題調整事務所(OCHA)のヴァレリー・エイモス国連事務次長は「2014年度国連人道支援資金の半分以上が必要なほどの、類をみない規模」と警告を鳴らす。国内各地における戦闘の激化にともない、隣国への難民の流出が急速に増加。紛争勃発から3年以上が経ち、家を追われた人の数は900万を超え、シリアは世界最多の避難民を出す国となった。その数は、紛争開始前のシリア全人口のおよそ4割に相当する。うち半数以上が子どもだ。
このような情勢の中、日本政府はシリア危機に対する積極的な人道・財政支援の提供を表明している。政府、経済界、NGOの連携による支援を実施するしくみを持つJPFも、2012年11月から支援を開始。シリア国内および周辺4ヶ国において、これまでに12のJPF加盟NGOが、31の支援事業を展開してきた。難民キャンプにおける生活物資の配布、水衛生環境の改善、障害者の支援など活動内容は多岐にわたる。 シリア紛争人道支援に現地での立ち上げから参加し、長年の現場経験を持つ月岡氏は、「国際社会の目指す目標の一翼を担いながら各国際機関と協働し、オールジャパン体制で日本発の支援を届けることを目指しています」という。
JPFは、設立以来、単独では迅速かつ包括的な支援を行う財政基盤等が十分にない日本のNGOを、様々な形でサポートしてきた。厳しい審査を通った現在47のJPF加盟NGOが各得意分野をいかして効果的に支援活動に取り組めるように、包括 的にプログラムを遂行している。現在までに、40以上の地域で、総額280億円以上、のべ800以上の事業実績を持つ。
※OCHA, Syria: 6 facts at the start of the 4th year of Syria's conflict,(14 March, 2014)
紛争における最大の犠牲者は子どもだ。シリアで死亡した子どもは1万人を越えた。中には、処刑や狙撃の犠牲となったり、街の周囲が包囲されて物資が入らないために餓死した子どもたちもいる。また、避難によって日常生活が破綻することで、教育が中断され、子どもの心身の成長が妨げられている。「男の子は少年兵となったり、女の子は性的暴力を受けたり、心が痛む現状があります」と月岡氏。JPFのシリアプログラムでは、子どもにとって当然の権利である教育を受け、子どもらしい生活を送るために、教育支援や心理社会的サポートなど、彼らを守るための支援に力を入れている。
来たる5月17日(土)、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所とシンポジウムを共催する。「現地で活動するUNHCRやJPF加盟NGOのスタッフがスピーカーとして来日します。同じ世界で起こっている惨状に対して自分たちに何ができるのか、現場の声に耳を傾け一緒に考える機会となればと思います」(月岡氏)。