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NGO能力強化研修プログラム

2016年2月29日~3月4日、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を米国・ワシントンD.C.にて開催

イベントレポート

Session12: Gender and Different Groups

「INEEミニマム・スタンダードにおいてジェンダーの概念は必須!」

時差ボケもあり、疲れがたまり始めてきた研修3日目の締めのセッションは「ジェンダーとINEE教育ミニマム・スタンダード(以下、INEE–MS)」だった。ジェンダーが緊急時の教育にどのように関わるのか、そしてその重要性は何かというテーマで議論をし、またケーススタディーを使ってグループワークを行った。

そもそもジェンダーの定義は何か、緊急時の教育でそれがどのような意味を持つのかということを再確認するところからセッションは開始した。ジェンダーという言葉には女性や性的マイノリティのイメージがあるが、社会的に形成された性に対する役割、責任、アイデンティティであり、必ずしも生物学的な性を意味するのではない。

INEEミニマム・スタンダードにおいてジェンダーの概念は必須!

ジェンダーの定義を確認した後は、紛争後や自然災害の直後という状況でのジェンダーに関する問題の具体例について議論を行った。例えば、性的な暴力(SGBV)、権利のはく奪、性差別、教育へのアクセス低下、保健用品の欠如など、さまざまな具体例が出され、どのような状態で問題になりうるのかを話し合った。

それからINEE-MSのジェンダーの別冊に目を通し、各ミニマム・スタンダードとジェンダーがどのように関わっているか、またジェンダーを事業に組み込む際の要件などを確認していった。INEE-MSハンドブックの別冊には、ADAPT (Analyse, Design, Access, Participate Equally, and Train) やACTC (Address GBV, Collect analyse and report sex, Target, and Collectively) というフレームワークが説明されており、状況分析、ジェンダーの課題解決のための活動計画とアプローチの策定方法を学ぶのに役に立った。

続いて、ジェンダーがINEE-MSの5つのドメイン(1.基礎スタンダード、2.アクセスと学習環境、3.教育と学習、4.教師とその他の人的資源、5.教育政策)それぞれにどう呼応するのかを、別冊をみながら意見を出し合った。ジェンダーはこの5つのドメインすべてに関わりがあり、ジェンダー少数派の教育へのアクセス権やニーズの分析、裨益者が関与できるようにすることで実現する参加者の多様化など、ジェンダー問題はすでにINEE-MSに組み込まれていることがわかる。つまりジェンダーは、INEEにおいて独立した一つの分野であるということではなく、すでにINEE-MSの一部に組み込まれていて、INEE-MSを満たすことはジェンダーの問題に取り組むこととほぼ同義であるということが認識できた。したがってジェンダーは別途考慮が必要なテーマではなく、INEE-MSを適用する際には必須事項であることが理解できた。

それから事例を一つ用いて、ジェンダーの問題を洗い出し、問題解決のための活動計画や行動計画を立てる練習を行った。参加者全員が5,6人からなる5つのグループに分かれ、INEEのそれぞれのスタンダードに照らし合わせて、ジェンダー課題の抽出や解決のための方策を話しあった。ケースは架空の国の事例であるが、国内で武装勢力が台頭して一部地域を制圧し、学校の校舎が軍事目的で利用されたり、女性の教育機会が後回しにされたりなど、実例に基づいているようなケースだ。その5つのグループはINEE-MSの5つの各ドメインを割り振られ、それぞれのグループが担当のドメインのテーマについて具体的な課題や解決方法について議論した。

INEEミニマム・スタンダードにおいてジェンダーの概念は必須!

事例に当てはめて、実際自分ならどのように課題を解決していくのかを考えるうえで、このようにシミュレーションをしながら議論することは実務者として非常に有益であるが、状況の解釈や課題の優先順位などは幾通りも考え方があり、議論がまとまらなくて苦労した。例えば私たちは5つ目のドメイン、「教育政策」のテーマでジェンダーに関する課題を議論したが、そもそも内戦状態にある国の政府が女性やマイノリティの教育機会へのアクセスを確保する政策を実施するキャパシティーがあるのか、また一部地域が武装勢力に制圧されているのに政策をどのように実施することができるのかといった点が大きな議論の的になった。

自然災害や紛争後の社会でも状況はそれぞれ異なるが、ジェンダー問題を考慮するということは紛争関係を考慮することと同じだということも大きな学びの一つとなった。上記の事例においても、武装勢力に一部制圧されている地域に教育政策を制定して実施するには、紛争当事者の状況、利益や立場など、それぞれのアクターに配慮するような内容の活動やアプローチが必要になってくる。ジェンダーの課題解決は紛争に配慮するアプローチ(Conflict-Sensitive Education ※参照:Day3, Session11)を取ることと必ず同じでなければならないのである。

3日目の最後に、いつも通り、本日の課題や学びを振り返った。ファシリテーターは本日の各テーマのカギとなる学びを短時間にすべて網羅し、質問や明日の予定までもしっかり確認する時間も確保していた。参加者は少し疲れているように見えたが充足感にあふれていた。

手島 正之
(特活)パレスチナ子どものキャンペーン(CCP)

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イベントレポートの目次一覧

イベント概要

ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」(※)の一環として、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を、来年2月29日~3月4日の日程で米国・ワシントンD.C.にて開催します(共催:米国NGO団体Mercy Corps)。

これは、昨今の世界情勢や緊急人道支援の性質と傾向、また以前よりJPF加盟NGOから寄せられていたトレーニング開催への高い要望を鑑み、JPFが教育分野における国際的なミニマム・スタンダード(INEE)についての学習機会の提供を模索してきた結果によるものです。
本研修参加者は研修終了後、トレーナーとして年度内に日本にて約2日間の研修を実施していただくことになります。よって、緊急教育支援に従事した経験を持ち、かつ日本での普及活動に意欲的な方を対象に開催すべく、研修内容や参加者の応募資格、条件等については鋭意調整中です。詳細決定次第、随時ご案内いたしますが、ご関心のある方は直接下記窓口までお問い合わせください。

INEE教育ミニマム・スタンダードとは:
緊急教育支援の情報ネットワーク(Inter-Agency Network for Education in Emergency : INEE)が策定した緊急時の教育におけるミニマム・スタンダードです。INEEの運営には、UNHCE、UNICEF、UNESCO、USAID、World Vision Internationalなどが入っており、国際的に認知されている基準です。本スタンダードは、ハリケーン・台風・地震・洪水などの「自然災害」と紛争や内戦によって引き起こされた「複合的な緊急情勢」に緊急的に対応するために設計されており、現在170ヶ国で使用されています。

参考:

INEE
http://www.ineesite.org/en/

INEEミニマムスタンダード
http://toolkit.ineesite.org/toolkit/INEEcms/uploads/1012/INEE%20MS%20Japanese_2010.pdf

内閣府HP:緊急時の教育のための最低基準とは
http://www.pko.go.jp/pko_j/organization/researcher/atpkonow/article033.html

※「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」について:
「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」とは、米日カウンシル(US-Japan Council)主導のTOMODACHI イニシアチブ、ならびにJ.P.モルガンの支援を受け、JPFが米国のNGO団体マーシー・コー(Mercy Corps)とのパートナーシップのもとに実施している研修事業です。東日本大震災におけるNGOの支援活動から得られた貴重な経験や教訓を活かし、日本のNPO/NGOが国内外でより効果的な人道支援活動を行うための能力強化を目的としており、2013年4月~2016年3月までの3年間で、人道支援に関するさまざまな研修を計画、実施しています。

研修概要

期間
2016年2月29日(月)~3月4日(金)
※この日程には、出発・帰国日は含まれていませんのでご注意ください。
渡航先
米国・ワシントンD.C.
費用
無料
※米国往復航空運賃(上限あり)、ESTA(渡航認証)申請費用、研修期間の保険料、米国国内宿泊費、日当(注)はJPFが負担します。
注)日当はMercy Corpsの規定額に基づき、米国ドルで支給されます。
定員
日本人10~15名 (外国からの参加者複数名)
※厳正な審査の上、参加者を決定します。
言語
英語

本件に関するジャパン・プラットフォーム(JPF)についてのお問い合わせ先

特定非営利活動法人(認定NPO法人)ジャパン・プラットフォーム

NGO能力強化研修プログラム担当:鈴木、谷口
E-mail:training@japanplatform.org
〒102-0083 東京都千代田区麹町3-6-5 麹町GN安田ビル 4F
TEL:03-6261-4751(事業部直通) 代表:03-6261-4750 FAX:03-6261-4753