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CONTENTS

目次

第1章

第2章

第3章

第4章

第5章

第6章

実施項目一覧

▼添付資料一覧
第1回ワークショップ概要
第1回ワークショップ議事録
NGOヒアリング内容議事録
     JEN
     AAR Japan
     WVJ
     NICCO、JAFS、JIRD
第2回ワークショップ概要
第2回ワークショップ議事録
ステークホルダー・ヒアリング内容議事録

調査報告書

戦略的アカウンタビリティのフレームワークを用いての
アカウンタビリティ・システムの構築を目指して
−ジャパン・プラットフォームの事例−

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第2章  JPFの概要

第1節 JPF誕生の経緯

(1)背景
JPFが誕生したのは2000年7月。その発端は1999年のコソボ危機の際の緊急人道支援計画であった。当時、日本の各NGO/NPOは支援計画を検討したものの、単独で難民キャンプの運営を実施するための能力と経験が不足していたため、4団体が合同で運営する「キャンプ・ジャパン」計画が生まれた。しかし、難民帰還が始まったことにより実現には至らなかった。計画策定の段階で時間を費やしてしまい、迅速に対応できなかったのである。
このことから以下のようなことが認識された。(1)単独のNGO/NPOでは緊急人道支援に対応しうる初動資金の確保が困難なこと、(2)緊急人道支援の現場で経験を積んだ人材が不足していること。これらの背景として、(3)NGO/NPO間で協働することに対する意識が低かったというセクター的背景、(4)NGOに対する社会の認知度/信頼度が低く、効果的な支援を受けられていなかったという社会的背景、のようなことが挙げられる。
以上の経験から、政治や経済の分野など、他セクターとNGO/NPOが協力することが必須であるという認識が生まれ、人道支援分野のNGO/NPOが集まってワーキング・グループを形成し、2000年上旬より協働事業に向けての課題整理が行われた。これと並行して、政府・経団連・NGO/NPO間の非公式会合「れいの会」が開催され、JPFの組織構成、各セクターの役割確認・資金提供を含む具体的協力内容などが議論された。ワーキング・グループと「れいの会」は現在のNGOユニットと評議会となり、2000年7月に任意団体としてJPFが設立され、2001年5月には特定非営利活動法人の法人格を取得した。JPFはこれまでに地震/津波・旱魃・雪害などの自然災害支援や、紛争・戦争で発生した難民に対する緊急人道支援を12カ国にわたって実施してきており、活動実績が蓄積されている。


第2節 組織構成とその目的

 JPFは紛争や自然災害による被害に苦しむ海外の人々を対象に、迅速かつ効果的な支援を行うことを目的として、政府・企業・NGO/NPOのほか、民間財団・学識経験者・メディア・国際機関など多分野のセクターから構成された緊急人道支援組織である。
評議会がJPFの最高意思決定機関として存在し、評議員は上記のそれぞれのセクターから選出されている。メンバーは、NGOユニット2名(代表理事1名と、副代表理事3名のいずれか1名)、外務省1名、経団連1名、財団1名、学識者1名によって構成され、表決権はそれぞれ1票ずつ有し(計6票)、出席者による投票の結果、過半数をもって決定とされる。賛否同数の場合は、議長であるNGOユニット代表理事が決定する。ただし、NGO/NPOに対する助成額決定時にはNGOユニットの2名と対象NGO関係者である評議員は退席し、残りの評議員とアドバイザーおよびJPF事務局間で審議される。
以上のように評議会で決定された事業を各NGO/NPO団体が実施することになる。プロジェクト実施の大まかな流れとして、緊急事態が発生した後、(1)NGO/NPOによる関心表明→(2)出動決定後、初動調査→(3)事業計画書提出→(4)評議会にて審議・助成決定→(5)契約締結、という運びとなる。しかし、自然災害と難民支援では要求される支援の性格が違うため、ケースに応じて柔軟に対応される。例えば、前者ではより迅速な支援が要求されるため、電話やメールで対応することにより決定までの時間を短縮できるような措置がとられている。助成を受けた団体は、プロジェクト終了後に外部監査を受け、評議会に対して事業報告および会計報告を行う。
このように、多分野のセクターがJPFを通じて、緊急人道支援という共通の目的を達成するために協働している。NGO/NPOは前節で提示された問題点である緊急支援時の資金や人材の確保が可能になり、迅速な事業を実施できるようになったが、JPFに参加する他セクターにおいても、それぞれのメリットが生まれている。
例えば政府(外務省)はODAの枠組みにJPFという新たなスキームを導入することにより、公的資金を有効に活用することができ、緊急時における「顔の見える支援」の効果を高めている。具体的には、日本NGO支援無償資金協力の枠組みから、初動活動(初期調査、現地での実施体制の立ち上げ、救援物資配布などへの支援)の為の資金が提供されており、緊急事態の際の迅速な対応を可能にしている。また企業は経団連を通じてJPFを支援しているが、その内容は物資・人材・技術ノウハウなど、資金だけにとどまらない。これらの資源を経団連が取りまとめることにより、それぞれの企業の強みを生かすことになり、また企業の社会的責任を果たす1つの方法を提示していると言えるだろう。メディアは情報の収拾と発進に寄与し、学生は「学生ネットワーク」を通じてNGO/NPO業務について知ることのできる機会を得、それを学生向けに情報発信している。その他、財団・学識者・国際機関などさまざまなセクターがあるが、それぞれの持つ強みをJPFに集約することによって相乗効果が生まれ、JPFに対する信頼を担保し、人材・物資・資金・情報の各方面において緊急人道支援に必要な資源が確保され、迅速かつ効果的な事業を実施することが可能となっている。
なお、上述の通り、JPFは緊急人道支援に活動対象を絞ったプロジェクト型・実動型ネットワーク組織という特色を有しているが、事業評価の結果から、緊急支援だけでなく復興支援もマンデートに含める必要性が新たに認識され、JPFのマンデートおよびガバナンスの再考のもとに、現在、組織体制の検討・見直し作業が行われている。

図:ジャパン・プラットフォーム組織図


第3節 JPFが果たす役割

以上、JPF設立の経緯と組織概要、各セクターの位置づけなどについて述べてきたが、組織の枠組みを超えた部分も含めた広い視点から、JPFが果たす役割について検討してみたい。 まず、前述したように日本のNGO/NPOは緊急人道支援への対応能力に問題があり、その結果JPF構想が生まれたわけであるが、この5年間の活動が蓄積される中で、緊急人道支援を効果的に行う仕組みを構築してきたと言えるだろう。今後、これまでの経験を活かして、より早く、より効果的な支援を実施できるような体制が構築・整備されることが期待される。
次に、日本国NGOとしての支援を通じた、現地国・地域における国益を醸成していることも指摘すべき点である。政府レベルでの支援のみが「日本の顔」となるわけではない。このことはスマトラ沖地震津波被災のとき、現地で活動を行っていたワールド・ビジョン・ジャパン(以後、「WVJ」とする)とアドラ・ジャパン(以後、「ADRA」とする)が“JPF”として共同記者会見を行い、結果「日本の顔」をアピールしたことは1つの好例である。これは、JPFが国外で果たし得る1つの役割だと言える。 また、第3の役割として、国内での活動が挙げられるだろう。JPFは非常に多種多様なセクターから構成されているが、このことはJPFの門戸が広く市民社会に開かれていることを示している。つまり、様々な経路を通してJPFにアクセスすることが可能であり、その結果、支援の輪が拡大するといった効果が期待されるのである。このことは各セクター毎の閉じられた領域内では実現不可能なことである。学生ネットワークによる活動や、日本経団連への活動報告会などは、学生や企業に対して支援の現状を知ることができる機会を提供している。
最後に、これまでの点にすべて共通することであるが、セクター間の“協働”を促進させていることが、JPFが果たす役割の中で最も根本的かつ重要な側面である。1対1のセクター間協働は多く見受けられるが、各セクターにわたって包括的に共同体性を形成しているJPFは、非常にユニークな組織形態であり、市民社会のあり方を示す1つの指標として、今後どのような組織展開がなされうるかが注目される。


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