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戦略的アカウンタビリティのフレームワークを用いての
アカウンタビリティ・システムの構築を目指して
−ジャパン・プラットフォームの事例−
第1章 はじめに
第1節 調査目的
(1)背景
近年、国際的な援助活動分野における日本のNGOの活動はますます活発になっており、同時に、様々な事業の実施にあたり、透明性の向上、情報開示などアカウンタビリティの向上についても求められている。市民によるNGOへの関心が高まる中、NGO側もアカウンタビリティを果たすことに関して、意識が高まっているが、各団体の規模や活動分野の違いなどにより、その理解度、実効性、また、果たされているアカウンタビリティの程度には大きな差があるのが現状である。
本調査では、これまでハーバード大学ハウザー非営利センターや国際協力NGOセンター(JANIC)など、国内外の非営利機関と共に、学術レベルにおける非営利組織の戦略的アカウンタビリティ・システムを研究してきた笹川平和財団からの助成を受け、ジャパン・プラットフォーム(以下、「JPF」とする)が、同研究内容に対するケース・スタディを行うものである。
(2)対象事例
本調査の対象事例として、2004年12月26日に発生したスマトラ沖地震における緊急支援活動を設定する。
(3)対象団体
JPF参加NGOのうち、「スマトラ沖地震被災者支援事業」(調査事業を除く)に参加したNGOを中心に関東11団体(AAR、ADRA Japan、BHN、IPAC、JEN、JCCP、HuMA、PWJ、SCJ、SVA、WVJ)および関西3団体(NICCO、JAFS、JIRD)の計14団体を対象団体として設定する。
(4)最終目的
JPF参加NGOが、JPF資金を用いたプロジェクトをケース・スタディとして、「JPF事業のアカウンタビリティを果たす」ことに対する理解を深める。また、戦略的アカウンタビリティ・システムの構築を通じて、ステークホルダーの満足度向上およびNGOとの関係性を強化することにより、より効果的な人道支援活動を実現する。
第2節 調査手法
(1)第1回ワークショップ(問題意識・情報の共有)
「スマトラ沖地震被災者支援事業」における各団体のアカウンタビリティに対する意識、取り組みなどに関して、問題意識、情報の共有を行う。
JPF参加NGOが緊急援助プロジェクトを運営する際に求められるアカウンタビリティとは何かについて、ブレインストーミングを行う。
JPFプロジェクトにおける組織戦略の明確化、ステークホルダーのマッピングを通じて、果たすべきアカウンタビリティを明確化する。
(2)NGOインタビュー(ベースライン調査)
第1回ワークショップの結果をもとに調査票を作成し、JPF資金中心型、自己ファンド中心型、国際的な組織運営形態のNGO(以後、「INGO」とする)、関西NGOの4種のNGO代表団体にインタビューを行い、より具体的なアカウンタビリティに対する取り組み、課題等について結果をまとめ、分析を行う。
(3)第2回ワークショップ(アクションプラン作成)
第1回ワークショップおよびNGOインタビューの調査結果をもとに、実際のプロジェクト実施を通じてこれまで実行されている取り組みについて、その概念および情報を整理し、さらにLessons Learnedについて意見交換する。そこから、実践における課題について議論を行い、JPFプロジェクトを実施・運営する中で、果たすべきアカウンタビリティ・システム構築へ向けての具体的な実行案(アクションプラン)を作成する。
(4)ステークホルダー・インタビュー
NGO活動および企業の社会貢献活動に深く関わりのある組織に対し、ワークショップおよびNGOインタビューで得られた内容を提示し、客観的な立場から意見や提言を述べてもらい、戦略的アカウンタビリティ・システム構築のための参考にする。
第3節 JPFの特殊性
本調査を行うにあたり、JPFの組織的特殊性を鑑み、以下の事項を考慮することが望まれる。
(1)緊急支援特化
現状では、JPFの支援スキームは緊急支援に特化されているため、アカウンタビリティについて論じる際も、緊急支援ゆえの制約が生じる可能性がある。
(2)非実施団体
JPFという組織(事務局)は、人道支援活動の実施団体ではないため、JPFとJPF加盟NGOのアカウンタビリティに対する定義には、乖離が生じる場合がある。
(3)2種のステークホルダー
JPFという組織の構造特性上、JPF事務局としてのステークホルダーと加盟NGOが考えるステークホルダーの2種類が存在することになる。
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