[2]調査結果
アフガニスタン概況難民、国内避難民支援活動

 〈1〉アフガニスタン概況
   20年以上に及ぶ戦乱により、アフガニスタンは難民国内避難民を生み続け、開発の機会を逃してきた。加えて、35年ぶりとも言われる干ばつにより、水、食料が不足し、新たな難民、避難民が流出し、昨年8〜9月の調査時には、周辺国を中心に国外に約400万人の難民が滞留し、国内避難民も100万人に達しようとしていた。栄養不良約70%、5才までの乳幼児死亡率26%、文盲率64%など、健康、教育、収入の指数を基にした人間開発指数はサハラ以南地域に匹敵、もしくは下回っている。
 9月11日のテロ事件以降、軍事作戦だけでなく、難民をはじめとするアフガンの人々の窮状は世界の注目を集め、90年代国際社会の関心が薄れ「忘れられた難民」と称されてきたアフガン難民はにわかに注目を集める。が、同時にタリバン政権から暫定政権への移行の過程で治安が悪化し、アメリカ、イギリス両軍による空爆の影響もあり、アフガニスタン国内での人道支援は極めて困難な状況におかれた。UN機関、国際NGOの国際職員は周辺国への一時避難を余儀なくされ、略奪の被害に遭った現地事務所も多数にのぼる。例えばUNHCRがカンダハールでの活動を再開したのは1月下旬である。 
(A)国内避難民約100万人を含め、2002年に支援を必要とするアフガニスタン人は約900万人と推定される。
(B)半数の子どもは慢性的な栄養失調で、4人に1人は5才までに死亡する。
(C)妊産婦の死亡率は高く、毎年16000人が妊娠が原因で死亡する。
(D)過去2年間、穀物生産量は50%以上低下し、家畜も激減した。穀倉地帯として名高い北部地域でも小麦の生産量が50%以上低下している。
(E)安全な水を手に入れることができるのは人口の23%に過ぎず、適切な衛生状態にあるのは12%だけである。
(F)タリバン政権下、女性は著しく人権を侵害され、就労、教育の機会を奪われてきた。
(G)就学できる子どもは3分の1以下で、教員、教材、教育施設は著しく不足している。
(H)800平方キロ以上の土地が、地雷、不発弾のために使用不可能であり、地雷、不発弾の事故のために毎月150〜300人の犠牲者が出ている。
(I)幹線道路の状態は劣悪で、1,700〜3,000キロの道路が修復を必要としている。
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 〈2〉難民、国内避難民
   UNHCRは9月以降の混乱により最悪の場合には新たに150万人の難民が流出すると予測した。結果的にはそこまで破滅的な数字とはならなかったが、UNHCRは2月時点でパキスタン国境地帯の16のキャンプで9月以降に流入した20万人以上を支援している。正規のポイント以外から入国しているアフガン人も多いと推測され、25万人以上の難民が流入したと推定されている。
 一方、パキスタン、イランから11月以降26万人が自発的に帰還した。また、国内避難民は2月末現在921,316人がキャンプ等に滞留している。(別添地図参照)
 UNHCRは2002年にパキスタン、イランから各40万人の難民、また国内避難民40万人の合計120万人が帰還すると推定している。
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 〈3〉支援活動
   12月5日のボン合意を受け、同22日アフガニスタン暫定政権が樹立し、民主的な国家再建に向けて動き出した。1月21、22日には東京で国際社会が財政的な支援態勢を固めるための「アフガニスタン復興支援会議」が開かれ、各国合計で1年目に18億ドル、複数年次で45億ドルを拠出することが約束された。会議の席上、暫定政権はアフガニスタンの復興にとって鍵となる優先分野を、(1)行政能力の向上、(2)教育(特に女子)、(3)保健・衛生、(4)インフラ整備、(5)経済システムの再建、(6)農業及び地方開発、と確認し、国際社会は暫定政権の主体性と上記の優先分野を尊重して支援を行なっている。
 現在、アフガニスタンで活動している国際機関は18機関、職員は前回調査時よりも格段に増員されている。
 UNHCRカブール事務所は1名だった国際職員が40名となっていた。また、NGOは暫定政権に登録しているものだけで380、未登録もかなりの数に上るとみられる。
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